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新 歪んだ愛の形[後編] [Page 8/12]
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8 : 打ちのめされて
「おい、起きろよ正太!」
いつの間にか眠っていた正太は、誰かの声に起こされた。もう昼休みになったらしく、体育館からは叫び声や、ボールの跳ねる音が聞こえてくる。
正太が目を擦りながら声のする方を見ると、そこには大山と、彼の取り巻きである村山と石原という男子が立っていた。朝、彼の半ズボンを脱がせたのは、この二人である。
「お前のおホモだちを連れてきてやったぜ。ほらぁ!」
あまり体の大きくない少年、石原がニヤニヤしながら言うと、座っている正太の目の前に一人の男の子を転がした。それは竜太だった。ひどく殴られたらしく、顔にあざができていて、唇には血がにじんでいた。さらに手や、膝にはいくつも擦り傷があった。
正太は優しく竜太を抱きかかえた。
「竜太…ひどい…」
「この竜太って奴もお前みたいにチンポ立たせてやろうとしたんだけどさぁ、ちょっと生意気だったから俺達でお仕置してやったんだよ」
平然とした顔で石原が言った。
「絶対に…許さない!」
正太はすっくと立ち上がると石原に飛びかかった。しかし、いとも簡単に突き飛ばされてしまい、竜太の横に倒れた。
「へへっ、おホモだちが仲良く並んでお昼寝か?それともこれからセックスでもするのかな?」
今度はひょろっと痩せた色白の少年、村山が正太の横にしゃがみ込んで言った。その言葉に他の二人も笑い出した。
「……」
「おい、何とか言えよ正太!」
村山が倒れている正太の腹を、まるでサッカーボールを蹴るかの様に思い切り蹴り上げた。
「あぐっ!…げふっ、げふっ、げほっ…」
正太はあまりの痛みに、ただ転がることしかできなかった。そこに大山が近づいてきた。まだ小学生のくせにかなりいい体格をしている大山は、軽々と正太を抱き起こすと、にっこり笑った。
「まだおねんねは早いよー、正太君」
その言葉と同時に、大山は正太に強烈な頭突きを食らわせた。正太の顔が歪み、眼から涙が溢れてくる。
「ほら泣けよ。弱虫正太。早く泣けよ!」
大山は、先生にちょくちょくひいきされている正太をいつも目の敵にしていた。そして村山、石原と三人でこっそり正太の持ち物を隠したり、靴に画鋲を入れたりと、いろいろな嫌がらせを今まで何度もしていたのだ。
「お前にはいつもムカついてたんだよ!ぶん殴ってやる!」
正太の胸ぐらをつかんだ大山は、拳を頭上に大きく振り上げた。覚悟を決めた正太が固く目を閉じた時、竜太が突然起き上がって大山に体当たりした。
「正太!早く逃げろ!逃げて先生を呼んで来い!」
竜太は大山の体を押さえつけながら叫んだ。
「竜太…」
「バカヤロウ!はやく行け!」
竜太の言葉に正太は涙を拭って後ろを向くと、一気に駆け出した。背後に竜太の叫び声を聞きながら…。
* * *
正太は職員室の川田の所に行き、今までのことをすべて話した。しかし、面倒なことが嫌いな川田は、正太の話を聞きながらも、適当に受け流せばいいやと思っていた。正太と川田は体育館の裏に向かった。
体育館の裏では、大山達三人がサッカーをしていた。竜太の姿は何処にもない。
「おいお前達、ここでケンカしてたんだって?」
川田はサッカーをしている大山達に訊いた。
「いいえ、そんなことないですよ。何かの間違いじゃないですか?」
大山は何食わぬ顔で言った。
「でも田辺がなぁ…」
川田は正太をちらっと見た。
「それじゃ俺達がケンカしたっていう証拠を見せてくれよ正太!」
「そんなぁ…ここで僕や竜太を殴ったじゃないか!竜太は何処に行ったの?」
正太は必死に叫んだ。しかし、
「知らねえなぁ…」
三人は冷たく首を横に振った。
「それじゃ田辺の言った事は嘘だったんだな。先生だって忙しいんだからあんまり引っ張り回さないでくれよ」
川田は正太に背中を向けた。
「えっ?もっとよく調べてください!」
正太の叫びは空しくこだました。教え子のいじめに関わりたくない川田は、正太の肩を軽くぽんと叩くと、さっさと向こうに行ってしまった。
そして、一人取り残された正太は大山達に取り囲まれた。
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