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新 歪んだ愛の形[中編] [Page 4/8]
4 : 好奇心の少女
「あっ、気がついたわね。良かった」
目を覚ますと正太は保健室のベッドに寝かされていた。前にもこんなことがあったな、と正太が考えていると、ベッドの傍に居た女の子が正太に話しかけてきた。同じクラスの桑野麻衣子という娘だった。
「あたしが教室に入ったら正太君がすごい熱出して倒れてるんだもん。びっくりして保健室に運んでずっと看病してたのよ」
見ると枕元に水の入った洗面器と濡れタオルが置いてある。心なしか熱も下がっているような感じだ。
「保健の…先生は?居なかったの?」
「うん、出張なんだって。だからあたしが看病を買って出たってわけ。だって第一発見者なんだもん」
麻衣子はくすっと笑った。正太もつられて微笑んだ。
正太と麻衣子は今まであまり話す機会などはなかったが、互いに嫌いなタイプではなかったので、二人はすぐに打ち解けた。
「ねえ、あたし聞きたいことがあるんだけど」
麻衣子はベッドの中の正太に身を乗り出して言った。
「あのね…竜太って…誰?」
正太の顔が一瞬こわばった。
「竜太?だ…誰?…その人…」
「うなされてる間中ずっとうわ言で呼んでたのよ」
「そんな…僕知らないよそんな人」
目を合わせようとしない正太の態度に、麻衣子は彼が嘘を吐いていると確信した。
「とぼけないで。誰なの竜太って。はっきり言いなさいよ!」
麻衣子は正太の曖昧な態度に、つい声を荒げてしまった。
「ううっ…僕…知らないんだよぉ…」
正太は枕に顔を埋めて泣きだした。麻衣子は慌てて正太に謝った。
「ごめんね正太君。今の事は忘れてね。それじゃあたし次の授業出るから。じゃあね」
麻衣子は軽く手を振って、そそくさと保健室を出ていった。そしてベッドの中の正太はしゃくり上げながら頬の涙を拭いた。
《絶対に知られちゃいけないんだ。竜太と…僕の事は…》
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